米国で国会が香港人権法案を満場一致で可決しました。
香港人権法案は、香港の自治を守るための法案とされています。
何のために米国は香港人権法案を自国の法案として可決したのでしょうか?
香港人権法案とはどのようなものなのか、わかりやすく説明します。
香港人権法案の内容や目的をわかりやすく!中国が困ることは何?
香港人権法案は、正式名称を香港人権・民主主義法案(ほんこんじんけん・みんしゅしゅぎほうあん、英語: Hong Kong Human Rights and Democracy Act)といいます。
米国合衆国議会には上院と下院とがありますが、両院ともに香港人権法案を可決しました。
まずはどのような内容なのか見て行きましょう。
香港人権法案の内容は?
香港は1997年7月1日にイギリスから中国へ返還されました。
中国に返還されるまでイギリスの領土だった香港は、中国と比べると民主的で経済的にも大きく発展していました。
経済的に発展した理由の一つとして、アメリカが香港に税制や人の移動に関して優遇を与えていたことが挙げられます。
アメリカは中国からの輸入品と比較して、香港からの輸入品に低い関税をかけています。
また、香港のパスポートを持っている人は、グアムなど一部の地域にビザなしで入ることができるのです。
香港人が世界でビジネスをしやすくしているのですね。
香港が中国に返還されたのち、中国は香港に対して少しずつ中国のルールを適用し支配を強めています。
支配が強くなると、米国が香港に与えている優遇によって中国が米国に対する脅威となりかねないのです。
そこで、香港人権法案は、中国が香港に対して高度の自治を認めなければ、税制などの優遇を停止することにしました。
ここでいう高度の自治とは、香港の人が中国の影響を受けることなく自分たちの法律を自分たちで制定するという意味です。
アメリカは香港人権法案を制定することによって、中国が香港を支配せず高度の自治を保障しているかどうかを毎年検証し、高度の自治がなされていないと判断したときには、することにしたのです。
香港は貿易国として栄えている
出典:JETRO
引用:日経
香港のGDPにおける貿易依存度は322.33%で世界1位(2018)です。
貿易でお金を稼ぐ国なのですね。
香港の1人当たりGDPは日本より高く、お金持ちといえます。
香港の1番の輸出先は中国ですが、アメリカは2位の輸出額の国なのです。
香港全体の輸出額の1割近くを占める、とても大切な相手なのです。
香港人権法案で香港の経済が悪化すると困る中国
各国の貿易依存度
引用:https://www.globalnote.jp/post-1614.html
香港人権法案によってアメリカの香港に対する貿易上の優遇がなくなると、香港の貿易は著しく悪化します。
香港は貿易でお金を稼いでいるので、アメリカとの貿易がなくなるとGDPが大きく低下します。
香港がお金持ちでなくなってしまうのです。
香港を中国に取り込みたい理由の一つは、香港の経済です。
米国から経済上の優遇を受けられなくなると、香港の経済がダメになってしまうのです。
自国領土である香港が貧しくなることは、中国にとって嬉しくありません。
また、アメリカの香港に対する貿易上の優遇がなくなるときは、中国が香港に対する支配を強め独立した自治を認めなくなったときです。
中国が香港を支配する場合、暴力を使う必要があるでしょう。
アメリカが香港人権法案によって香港に対する貿易上の優遇を中止にすると、中国が香港に対して暴力を使ったことがバレてしまうのです。
中国が暴力を使ったことを先進諸国が知ってしまうと、先進諸国は中国に対して経済制裁を実施するでしょう。
いくら経済大国の中国であっても、先進諸国からの経済制裁を受けると大きな痛手となります。
香港人権法案が中国にとって困るのは、
中国が香港の支配を進めると、
- 香港のGDPが低下すること
- 中国に対する先進諸国からの経済制裁が起こること
だといえるでしょう。
すると、中国にとっては香港が魅力的でなくなります。
中国は、香港の高いGDPを維持したまま、中国に取り込みたいのです。
なぜアメリカは香港人権法案を作ったのか?
香港は中国ですが、本国とは異なる制度のもとで統治されるという、1国2制度で運営されています。
中国は経済的に発展している香港を取り込みたいと考えています。
しかしアメリカにとっては、脅威である大国の中国が香港を取り込むことでさらに強くなってしまうことは困るのです。
アメリカは中国の勢力が拡大することを阻止したいのです。
そこで、アメリカは中国に1国2制度を維持させて、香港を中国に吸収されないようにするために香港人権法案を作ったのでした。
まとめ:香港人権法案は香港人と米国にとって価値のある法案
香港人権法案によって、中国は香港に対する支配を弱めざるを得ないでしょう。
中国が武力で香港を制圧することも考えられなくはないですが、その結果香港経済は壊滅的な被害を受けるため、中国にとって取り込みたくなる動機がなくなります。
中国と米国との関係に大きな影響を及ぼす香港人権法案。
トランプ大統領がサインすれば法律として成立する香港人権法案。
今後の動向に注目が集まります。
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