2019年5月11日、丸山穂高衆議院議員(35)が北方領土の国後島に「ビザなし交流」の訪問団のメンバーとして訪れた際、酒に酔って心ない発言をした件について、自民党はこれまで「けん責決議案」を衆議院に提出していました。
しかし、「直ちに進退を決するべきだ」との声が高まり、自民党はこれまでに提出した「けん責決議案」を取り下げ、代わりに「糾弾決議案」を衆議院に提出することになりました。
「けん責決議案」と「糾弾決議案」とはどう違うのでしょうか?
【丸山議員 コニャック10杯】
戦争による北方領土奪還に言及した丸山穂高衆院議員は当時、コニャックを10杯以上飲んで酔っ払い、品位に欠ける発言をした揚げ句、参加者ともみ合いになるなど、数々の迷惑行為に及んだそうです。#丸山穂高 #北方領土
記事はこちら⇒https://t.co/zXeDy8gEsH pic.twitter.com/3JBDDyXFPK
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) 2019年5月30日
「糾弾決議」と「けん責決議」の違い
これら二つの言葉の違いは「糾弾」と「けん責」です。それぞれの言葉の意味を確認しましょう。
糾弾の意味
– 三省堂 大辞林
罪状とは「どういう罪であるか、罪の具体的な事実」のことです。
「罪状を問いただす」わけですから、丸山議員に「どういう罪をしたと考えているのか答えなさい」という意味が含まれています。
このとき、質問者(この場合は自民党)は暗に「丸山議員の罪はこういうことだよ」と考えを持っています。
糾弾は、
罪の認識が丸山議員と衆議院とで同じであることを確認したうえで、罪を非難する
というニュアンスになります。
もし、同じ認識でなければ「ただす」すなわち「質問して追求する」のです。
そのために、衆議院は丸山議員に弁明書を提出させています。
丸山議員と衆議院とで罪の意識をすり合わせて、丸山議員に自発的に議員辞職させることが目的です。
けん責の意味
– 三省堂 大辞林
これまでに自民党から衆議院に提出されていたのは「けん責決議案」でした。
けん責(けんせき)は、一方的に「あなたはこういう失敗をした」と伝えて、罪を非難するようなイメージです。
糾弾の場合は、
「あなたの罪がどういうものか言ってみなさい。
あなたの罪は本当にその内容なのか?
なぜそう思うんだ?
この点についてはどう考えているんだ?…」
というように相手の罪の認識を確認します。違うのであれば、質問して追及します。
糾弾はしつこい印象で、けん責の方があっさりとした印象ですね。
糾弾決議とけん責決議の違い
自民党は「けん責決議案」の提出を取り下げて、「糾弾決議案」を提出しました。
決議とは決めごとの意味で、糾弾決議が可決されると「糾弾することを決めた」ことになります。
丸山穂高議員は衆議院議員ですから、衆議院で決定したことに従わなければなりません。
丸山穂高議員を糾弾することを衆議院で決めたら、丸山穂高議員は衆議院から非難されるのです。
「けん責決議」の場合は、「衆議院は丸山穂高議員の罪を非難します」という一方的な意思表明に過ぎませんでした。
「糾弾決議」の場合は、「丸山穂高議員が衆議院と同じ罪の意識を持っている」ことを確認したうえで、「衆議院は丸山穂高議員の罪を非難します」ということになります。「けん責決議」よりも強く非難をしています。
でも、
「君は悪いことをしたな、だめだぞ!」と言っているだけで、
具体的な指示や、強制的に何かをさせることはありません。
糾弾決議が可決されたら何が起こるか?
衆院は6日午後の本会議で、北方領土返還に関し「戦争」に言及した丸山穂高衆院議員(日本維新の会から除名)に対し、「院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない」などとして、実質的に丸山氏に議員辞職を促す「糾弾決議」を全会一致で可決した。丸山氏はすでに国会に提出した弁明書で議員辞職を否定している。決議に法的拘束力はない。
糾弾決議は、丸山氏の言動を「平和主義に反する発言をはじめ、議員としてあるまじき数々の暴言」と指摘。「国益を大きく損ない、本院の権威と品位を著しく失墜させた」と非難し、「院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない。ただちに、自ら進退について判断するよう促す」としている。
出典:朝日新聞デジタル
丸山穂高議員に対する「糾弾決議」が衆議院で可決されました。
これまでに見てきたように、「糾弾決議」は「君がやったことは悪いことだから非難する」と言っているだけです。
にもかかわらず、「ただちに、自ら進退について判断するよう促す」と報道されているのは、衆議院が丸山議員の辞職を決める権限を持っていないことが原因です。
衆議院議員を衆議院が辞めさせられるのは、懲罰事犯があった場合に限られます。懲罰事犯とは院内の秩序を乱すことで、具体的には下記の2つ場合に限られています。
懲罰事犯1.
・招集があったのに応じなかった
・正当な理由なく会議、委員会を欠席した
・事前の申請なく休暇を取った
上記のいずれかが起こってから、
衆議院議長が議員に来るように伝え、7日以内に出席しなかった場合
国会の場で議長の制止又は取消の命に従わない者(衆議院規則238条)
これらはいずれも国会内での話であり、国会以外の場で例えば、不倫をしたり飲酒運転をしたからと言って、衆議院は議員を辞めさせることができません。
丸山議員はこれらの懲罰事犯に該当していないため、衆議院は強制的に辞めさせることができないのです。
だから、「ただちに、自ら進退について判断するよう促す」としているのですね。

まとめ:糾弾決議とけん責決議との違いは?
自民・小泉氏 丸山氏の糾弾決議採決時に退席 https://t.co/rvHxunTMHZ @Sankei_newsより
小泉進次郎さんの意見を支持します。泥酔した丸山議員の人格をこれほど厳しく非難できる位、他の国会議員は人格的に立派なのか。国会議員の進退は、本人か、選んだ有権者に委ねるのが民主主義だ。— 山田宏 自民党参議院議員 (@yamazogaikuzo) 2019年6月6日
全会一致で可決されたものの、各議員の異議なしの声も小さく、可決された後の拍手は野党の一部からしか無かった。
自民党内から可哀想だとの声も上がった。#丸山穂高 #糾弾決議
丸山衆院議員の糾弾決議可決 #SmartNews https://t.co/6e2zQ2TRst— 大西宏幸(ひろゆき) (@onishi_hiroyuki) 2019年6月6日
私は丸山議員の言動を批判してきた。だが不品行があったからといって、法を犯していない人間をそこまで追い詰めてよいのか。
維新には長きに亘る彼への怒りがあるだろうし、他の野党は振り上げた拳問題があるのだろうけど、少数派を抑圧しだすと何が起きるか歴史が示している。https://t.co/kmIu5xt5Ql— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) 2019年6月6日
「糾弾決議」は「君は悪いことをしたのだから、議員を辞職するか早く自分で考えろ!」という意味になります。
「糾弾決議」を突き付けられた丸山議員はツイッターで「その任期を全うし前に進んでまいります。」とすぐに回答しています。これにより、衆議院からの質問に対して回答していることになります。
衆議院は、丸山議員がやってしまったことから何を学んでどう行動につなげるのか、有権者に示していく必要があるのではないでしょうか。
ただちに自ら進退について判断を。仔細は議運への提出文書の通り、行蔵は我に存し毀誉は他人の主張にて。その任期を全うし前に進んでまいります。
衆議院議員 丸山穂高— 丸山ほだか (@maruyamahodaka) 2019年6月6日
コメント